素敵な彼
「ここで心のケアは期待しないで下さい」
と、どの不妊BBSにもよく書いてある。
この大病院は、病院中が大忙し、院長は高圧的で、他ドクターも
汗だくだと言う。
「はい、失敗!!どんどん行こう!感傷なんて後回し~」な
雰囲気だそうだ。
私は、何が起きても何を言われても傷つかないように、
さんざん検索マシーンと化して院長おきまりのセリフまでをも、
たっぷりとインプットしておいた。
噂の曲者院長は高圧的と言うよりも・・・
一日に何度も同じ事を言うんだもの、そうなるんだろうなぁ。
それは自信たっぷりと高らかに、オペラのように叙情的で詩的な語り。
歌い上げられるは、技術賛歌と生産的・合理的思考。
いやあ、セリフもぴたりBBSの皆さんの仰るとおりだ。
思わずププって笑ってしまいそう。こらえるのが大変だったさ。
「まだヒュ~ルナ~ル(舌巻きで)結果出てないけどさ、
自然妊娠した事あるなら精子に問題ないわけよ。
そしたら原因はね、あなただから」
「残念だけどね、あなたのせいだから」
「間違いないよ、あなたのせいよ」
つまりやはり、ピックアップ障害の事を言っているのであるが、
常識のある病院じゃあもっとも言っちゃいけないお言葉
「あなたのせいよ」を連続三回言われる。
これはみそぎの儀式である。
だって、きついこと言うけどさ、俺はあんたを救ってやるのさ、と言わんばかりの彼なのね。
そんな彼がくれた宝物。不妊治療について書かれた彼の著書である。
いや、本質的な「プレゼント」はこの本自体でなく、この裏表紙に。
彼のサインと素敵なメッセージ
「上村篤子さんへ。夢を貴方に・・・」
うう・・・徹底している。
病院内のカフェにある300円カレーやスパゲッティーを楽しみに
ともかく一ヶ月の通院を開始する。
それはもちろん体外のスケジュールで。
あれよあれよと日程はこなされ、いよいよ人生初の採卵だ。