小事争論 こじ

アジア服・南国よろず屋ままかのボス。まだときどきちゃぶ台をひっくり返したりするけどだいぶ穏かになりました。

彼女と彼と彼らについて

誰もがきっと「ちょっと早いよな」と思いますよね。私も正直どうしたもんかしばらくの間考えていました。13歳の娘にとって初恋となるこの出来事について。

 

うちのTwitter通称「娘m」百伽(モカ)と言います。元気いっぱいクールなお洒落さん映えのセンターって雰囲気とは裏腹にセンシティブなところがあり、というか三つ子の魂百じゃないけど2歳の頃から長く重度の人見知りで怖がりでして、今でも受け入れてくれた人がずっと好きだし、一度食べて美味しかったものを繰り返し食べるし、楽しかったことだけ何度もする冒険しないタイプ。中身は2歳の頃と変わらず、こだわりが強いおずおず屋です。2年くらい前かなぁ、私や双子に肩をポンっと触られるのもイヤで、ひとりになるのもイヤ誰かといるのもイヤ、扉が少し開いているのも怖いから閉めたいけど、閉めるなら手順があるからなどと言い出し「これはお化け問題じゃなくて自分の脳が勝手に作り出してるものだから」と、ひとり静かにシャワーで泣いたりベッドで泣いたりしながら過ごしてましてね。そんなメンドクサイ最中でも彼Uのことだけは平気だった。いつもいつまでも公園のベンチに座っておしゃべりしてクスクスと揺れるその小さな2つの背中を母はいつもキッチンから見ていました。「付き合ってんの?」ってふざけて聞いても「ノー!ベストフレンド!」と言ってましたね。大勢の中でUの隣に自然に座って肩が触れても大丈夫。転校してきた頃の彼Uはまだ半ズボン少年だったのに、突然ひょろひょろアスパラガスみたいに背が伸びて、BTSがダイナマイトで炸裂したあたりで彼の人気も大爆発。人気者なのにどうもないって態度で変わらずモカと語らい過ごしていました。少しお兄さんな彼はふっと暗い顔をして難しい気持ちを抱えて見えることもあったけれど、そんな時でもモカの顔を見ながら話している時はとろけるような柔らかい笑顔で、わぁ、これは大好きに違いないわ!って思ってましたよ。つか全部私の前で起きてるってとこがまた面白いんだけど。私が中学生くらいの頃って恋愛は秘密事で、支配欲ばかり強くて幼稚なせいで変にドロドロしてたのに、彼らの目を覆んばかりのあけすけさは爽やかです。

 

大人がいちばん気になるのはやはりセクシャルな問題です。「発表があります!わたしボーイフレンドが出来ました!誰だと思いますか!」(全員正解)の時に、もういのいちばん話しました。どこまでわかってるかアレですけどね。ただ急いで大人になることはないのよって、子どもであることもゆっくり楽しんでくださいってそれはちょっと真面目に言いました。そしたら夫タッキーもそう言っていたそうです。私は金スぺなんてやってめっちゃ開放的な親のふりしてるけど、お友達にはなかなかのツンデレな対応をしてきてそりゃもう甘い顔をしたらどんどん侵食してくるんじゃないかと戦々恐々でしたし、彼Uに対しても急接近が怖くてクールな態度にしてました。どんどん来るからね。私の口癖はもう「早い、早すぎる」ですよ。ようやくそのスピードに馴染んできていろんな話が出来るようになりました。こうなってからじゃないと言葉って届かないよなって今は思います。彼Uは毎朝モカを迎えに来て、なんなら秘密の鍵の隠し場所から鍵を出してきて家宅侵入、髪ぐちゃぐちゃで猫とゴロゴロしてる私に真っ暗いドアの隙間から挨拶して(!)娘の部屋へ行き起こし、朝ごはんを一緒に食べて登校。帰りはただいま~ってうちの子みんなと帰ってきて上がっておやつ食べてゲームしてから帰宅。時々晩ごはんまで食べていく。週末もいる。まぁほとんど家にいるわけ。「帰る意味」って私が思うころついに彼も「泊まりたい」と言ってきたんですよ。それもまた私が具合悪くて髪ぐっちゃぐちゃにして寝てる所へワンノックで直接お願いしますって言ってきた。OKちょっと考えさせてって言って15分後にLINEした。「毎日うちに来ていいし、晩ご飯も食べていいし、遅くまでゲームすることがあってもいいでしょう。でも家には帰ろう。とにかく毎日家に帰ろう。よく言って来てくれたね。私達はウソをついたり隠し事をしたりせず、いつもお互いに正直でいましょう。ありがとう」と返事しました。それから言われなくてもちゃんと帰ります。いやなんとなく伝わってくるんだけど、私の言う事が正解だってストンとしてると思う。

 

彼Uのとこもお父さんがタイと韓国行ったり来たりでお母さんのワンオペ。お母さんはバンコクで韓国料理のレストランを経営していて、あまり英語が得意じゃないらしく私とは深いコミュニケーションがとれていないんだけど、モカと付き添い双子兄の彪(ひょう)がお家にお伺いするとたくさん美味しいご飯を食べさせてくれて、日曜日にはUがお昼ご飯だよってお母さんがおかずをたくさん持たせてくれたり、彼女の温かい気持ちが伝わってきます。本当に幸せな時間です。男尊女卑はいちにを争う日韓だけど、彼Uは大変なお母さんを見ているからか、さっとお皿を下げたりテーブルを拭いたりとめちゃ気が利きます。

 

ずっと前に「日本人の友達ができると思ってなかった」と彼Uが言ってたと聞いた時の、胸の痛みをまだ覚えています。うちの子は(私の子だからな)2つの国の間にある困難についてよく知っているから、瞬時に気持ちを共有できたの本当に良かったけど、知らないと言う事は罪ではないとは言えないよねって、周りが知らな過ぎてめっちゃヒヤヒヤしたよと双子が言ってましたね。先日は双子の凛がおもむろに今改悪されようとしている入管法について話し始めどんどん話は多岐に渡り、私がやってきた在日問題(つまり日本の問題)韓日米、南北なんかの話になり、Uはとてもすてきな顔で話を聞いていて、真摯な態度で自分の意見を言っていました。日本の話はどうにも不安になりがちなので「いやいやいや大丈夫よ、みんな韓国大好きだから」の後に「なにがあっても私が必ず守るからね」って言いそうになって、いやいやいやいやそんな事言ったら余計に怖いじゃないと思って自制いたしました。しましたけど、本当に子ども達の未来の為にいい国にしなくちゃいけないよって思います。ほんっとに。

 

「なんかツインレイとこんなに早く出会ってしまうことってあるんだね」とキッチンから公園のベンチに座る2人の背中を一緒に見ていた彪がポロっと漏らして、実は私もそう思っているんだけど、でも言うとふたりがそう思い込んじゃうといけないから黙っているんだって言いました。

 

彼らは若い。若すぎるし、これから人生まだ70年くらいあるんだから、いろんな人と深く知り合ってたくさん恋もして、いろんな景色を見たらいいしそれはすごく大事な事だ、と思っています。思ってました。だけどさ、そんな大人が考える月並みな発想がどれだけ残酷かと思うのですよ。君達はいずれ飽きて離れていくけどいいさ何もかもレッスンさって?わかりますよ私も汚れた大人なので、この時間を続けていく事がどれだけ難しいかわかっています。だから娘の綺麗な手が彼の背中にある時も、彼が娘の顔を覗き込む時も、その時間が優しくて温かいほどせつない。彼らはいま懸命に何かを追いかけてる。達観した私が人生の厳しさを諭したり、責任責任と詰め寄ったりしないどこうって思っています。親として間違ってるかも知れないけど、もう私がうるさいわ大人!って思ってるwwwそしてそうは言ってもこれからきっと何度も道に迷って間違えて傷つけあってしまうんだって想像してキッチンで泣いたりしているアホwwwww

 

そう、子ども同士の「つきあう」なんて、一緒におやつ食べてるだけでしょうって、私を安心させようとして言ってくれる人もいます。私はそのたびにちょっと違うねん、この輝きをどう伝えたらいいんだろうって思うんです。そんな気持ちで撮った一枚です。

 

 

モカが恥ずかしがっちゃって全然まともな顔しないし、私もうわついちゃってファインダーにちゃんと入ってないとかとか酷かったんだけど、ダメな写真も含め、本当に今しかない美しさだなぁって思います。厳粛な清潔さの中に1mmだけの色っぽさと、真っ直ぐさがほんとうに尊い。

 

この日彼Uは16歳になりました。

彼らは前にしか進まない。

ふり返らず進め進め。

愛なんてほんとは大人も知らないの。