小事争論 こじ

アジア服・南国よろず屋ままかのボス。まだときどきちゃぶ台をひっくり返したりするけどだいぶ穏かになりました。

正念場

新しい病院の院長は女性で、恐らく私と同じ年くらい。 「自然周期採卵をしたいのですが、年齢が年齢なのでどうで しょうか」と言うと、ぱっとカルテを見て 「ん!低刺激で行きましょう」と即決。 「大丈夫、刺激は最小限でいきますから」と。 完全自然周期に憧れていた私であったが、心配なのは卵年齢。 そう、37歳を過ぎると卵は日一日と年を取ってしまう。 自然周期では採れる卵の数が少ないので、その周期失敗した 場合、また一月先の古い卵を採卵することになる。 それでは着床率も下がってしまうのだ。 私くらいの年齢になったら、それよりも少しだけ誘発の刺激を 強くして、先に3.4個卵を採っておいた方が有効、 と言うことらしい。 「誘発」と「抑制」のバランスが決め手の卵巣刺激。 一日2本、約15000円程の注射をうちに往復3時間半をしばらく 通う。道すがら箱根そばをすすりつつも、金銭感覚が次第に 壊れていく。 何がなんだかあっという間に医療控除の射程距離内だ。 考えても仕方がない。 とにかく仕事に影響が出ないよう、毎日駆け足だ。 そして、訪れた採卵日。 不妊治療の流れで一番大変なのが採卵。 細い針が膣から挿入され卵巣を刺し、いくつも出来た卵胞から 卵子を中の液ごと吸い上げるのだ。 卵巣の場所によっては、子宮を貫通して行う。 時間にして5~15分の出来事ではあるが、前夜から絶食を 要するれっきとした手術である。これがねぇ・・・ 前回は投薬なしの自然採卵で、卵は1個だけだったから 針を刺すのも1度だけ。だからほとんど痛みを感じず、 20分の休養で家路につけたのだが・・・ 今回は6個の卵胞に針を刺す。 だからって全部に卵が入っているとは限らない。 名前が呼ばれ診察室で簡単な話をし、内診室へ。 きっと卵胞の大きさなどを見てるのだろう、と思ったら 「それでは始めます」と。 え!なんてフランクな。リベラルな。 この病院では手術着に着替えることもなく、手術室へ 行くこともないらしい。 生理痛のような深く鈍い痛みがずーんと来るのは前回も 同様だったのだが、3個目の卵胞へ針を刺した時、ビクッと する程の痛みが突然やってきた。 その痛みはキーンと頭から飛び出しそうな高音層の痛みで、 針を刺す卵胞を変える度にどんどん強くなる。 思わず声が出ずとも軽く暴れてしまい、先生を蹴り上げて しまう所であった。 「はい、終りましたよ。がんばりましたね」 休憩室で横になって数時間休憩しても、痛みは去らない。 一応、看護師さんにその事をちょっと伝えてみたのだが、 何しろ数個の卵胞を刺したのは初めてのことなので、 どのくらい痛いのが「普通」なのか分からない。 アピールが弱かったようで、診察室に入る事はなく家へ 帰されてしまった。 電車の振動さえ痛みを誘う。 数駅ごとに降り、お腹を抱えて小さくなっていた。家路は遠く、 気は遠く、なんとかたどり着いた玄関を開けたら速攻気絶。 それから4日経ってもお腹がパンパンに腫れたままだった。 どうやら軽い卵巣の炎症が起こってしまったようだ。