小事争論 こじ

アジア服・南国よろず屋ままかのボス。まだときどきちゃぶ台をひっくり返したりするけどだいぶ穏かになりました。

卵、取り違え

なんともやりきれない・・・。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090224-00000003-yom-soci 圧倒的に医師が悪い。 だが、きっと人工中絶を選択した20代女性にも、いろいろな意見が出ているところだと思う。 「もしかしたら自分の卵かもしれない・・・」と言う可能性をどうやって捉えたものか・・・・ 自分の子供かどうかわからない、と言う悲しく大変な事態は、誰にだって抱えられない程の苦しみであり、その選択がどうのこうの外野は言えない。言ってはいけない。 人工中絶というショッキングな出来事から彼女の体や心の痛みを、想像すればやっぱりどうにもやりきれない気持ちになる。本当に・・・ ただ・・・ 彼女が20代で最初の胚移植だったと言うのは、この選択をさせた大きな材料となっているに違いないと思うのだ。 そして、気付くのは・・・ この分裂胚を間違えて20代女性に移植されてしまった(かも知れない)もう一人の悲劇の人。 40代女性の存在だ。 40代での体外受精。 この世界に踏み入った人ならよくご存知と思うが、37歳の山、それより更に高い40代の山がある。30代後半、ましてや40代の声を聴けば受精卵がシャーレの中で育つ事すら難しいのだ。 私の場合は無理に多数の排卵を促さない自然に近い方法で卵を育てて、体外へ採取出来た卵は4っつ。うち移植の日まで生き延びたものは2つだ。私の病院では母体に過度の負担がかかる多胎は絶対避けるため、いっぺんに複数個の胚移植は実施しない。 せっかく分割してる卵・・・!その存在を忘れられない私が「双子でもいいんですけど・・・」とつぶやくのをドクターは一笑に付し、1つは大事にキープとなった。 しかし移植の翌日、その1つは分割を停止。 本当にたまたま1個やっと育って移植出来たのだ。 スパルタで卵を多数作る病院の場合、採卵はそれだけの苦痛を伴う。 数十個も出来て、その数の分だけ卵胞に針を刺すのだ。 たくさん採卵出来たとしても全部が分裂を始めるなんて事はまずない。採卵の度に1個でも分裂へ漕ぎ着けたらとても優秀だ。 ほとんどのアラフォーは、空胞も覚悟で挑み、いい卵を作るのにはどうしたらいいのか悩み、今度こそ移植までいけるよう祈り、費用の為に働いている。段階の一つ一つが大きな山なのだ。 彼女も必死だったと思う。 そんな大事な卵だったんだよ・・・その受精卵。 もしその卵が自分のお腹に戻っていたら、今度こそ着床したのではないか? いや若いお腹に入ったから育ったのでは? そもそも自分の卵ではなかったのではないか? いやいや、きっとあれは私の卵だ。私だってそんな良い卵を作れるんじゃない・・・ いや・・・もう妊娠までいける卵なんて二度と出来ないかも・・・ 毎日、毎日、「もしも」に追いかけられているに違いない。 取り違え、には必ず相手の存在があるのだ。 若くない私は、ニュースの度にもう一人の彼女の事を思ってしまう。 もし移植されたのが40代女性の方だったら・・・どうしたろう。 いずれにしても「産む」と言う選択をすれば、病院は彼女達の未来の為と事は隠密にされ事件は隠蔽されたでしょう。 もしかしたら、20代女性は戦う事を選んだのかも知れない。 それだって、なんてしんどい。 ふたつの人生が、やりきれない。