ホテル・ルワンダ
つい12年前に起きた事実である。
日本人を含まない事件に関しては、まったく興味を示さない我が国で
その事実はいったいどの程度報道されていたんだろうか。
第一次世界大戦前はドイツの植民地であり、その後ベルギーの手中に入るルワンダ。
両国は特に違いのない二つの民族にヒエラルキーを与える。
白人に近い顔をしているツチ族はフツ族より優れており、フツ族は野蛮であると。もちろんそんなのまったくの無根拠。
そしてフツ族の土地にどんどんツチ族が入植してくると、蔑まれたフツ族は憤懣を澱のように溜め続けるようになるのである。
こうして両民族間に歪を持たせるのは、イギリス発祥の植民地政策。
植民地経営のいろはのいで、世界各地で当たり前に行われている。
民族間の団結を阻めるし、強い民族に土地を支配をさせてからコントロールすれば余計な世話がないのだ。
意図的に誘発される憎悪。
憎悪を抱えたままルアンダ独立。長い長い内戦がやっと終りそう・・・そんな時である。
ドラマとして確立されているので、事実など知らなくても充分に鑑賞出来る。
主人公の人間性に感動し、目を離す暇もなく入り込んでいけるだろう。
それも良かろうけど、やはり、たったの12年前に「世界が見捨てた国」があった事実。
その事実を真ん中に置いて観て欲しい。
12年前、私達は成熟した国際社会の中で生きていることを当たり前としていた。それを意識する必要もないくらい。
貧困や蛮行は発展途上国だから起きるのだ、と思ってはいなかったか。
人の感情をも支配し、破壊してしまうのは「政治」だとか「経営」だとか言う「国際社会」の人間とは知らなかった。平和維持とは傍観し、批評し、切り捨てることだと思っていなかったはずだ。
根拠なく愛せない国があったり、大した意味もなく好きじゃない人種があったり、まるで産まれた時から仇みたいに思える人がいたり。
そんなことはないだろうか?
愚かだからコントロールされてしまうのではないのだ。
まるで自分そのものから湧き出たかのように思える情動は、実は空気の様に自分の周りに充満させられた誰かの悪意で、生きた分だけ蓄積され沁み込んでしまう。それくらい気が付かないこと。
虐殺した人も殺された100万人も、普通の人達である。
主人公のポールは、裏切られ、捨てられる中でも、世界と繋がっていくことを諦められない。それだけが可能性の光として映画の中にある。
まぁ何しろ彼の仕事振りをご覧あれ。武士の一分である。
とても日本人っぽいのだ。
天下一品のホスピタリティー、感情を抑制し、秩序を重んじ、生業を誇りに思っている、そんな所が。
残酷なシーンを恐れて観ない(知らない)事こそ残酷。
一方的にお勧め!!!