小事争論 こじ

アジア服・南国よろず屋ままかのボス。まだときどきちゃぶ台をひっくり返したりするけどだいぶ穏かになりました。

スティーブ・ジョブズを失った世界。

私がコンピューターに初めて触ったのは20年程前、まだ画面は濃いグレーで緑のフォントしか浮かんでないモニタだった。今のコンピューターのスタイルしか見たことのない世代にとっては、むしろそっちの方がコアな事してるように見えるであろう宇宙的な画面だ。見た目はマニアック風でもなんちゅう事もない。それにOLが触ってる部分なんてワープロ的な要素んとこだけ。当時の保存媒体はフロッピーディスクのみ。ハードディスクに保存の容量なんてなかったなぁ。

そんなある日に発売された「Windows」

「これはアイスクリームで言うコーンみたいな物で、中に入ってるアイスクリームがないと意味ないんだけどこのコーンがないとアイス食べられないしこのコーンがすごいわけよ」と当時のオタ友森山氏が説明してくれたが、なんの事かさっぱりNASAな話で、しかし当の森山氏とてまだ実物を見たことないでしゃべってんるのだから、まさにキリンを想像しながら待ちわびている間に「獅子の鬣、鹿の角、馬のひずめに・・・」なんて話で盛り上がってる明治の民そのものだ。

私の友人の多くはマックユーザーだ。イラストレーター、デザイナー、クリエイター・・・iphoneのアプリを作ってるのもいる。あの当時、誰もが自分のもっとも身近にあったコンピューターに触れ、あの窓が開いた時の驚きとトキメキをそのままに現在までアップグレードし続けているんじゃないだろうか。私はその頃、派遣社員としてあちこちの企業や官公庁で働いていたので、当然出会ったのはwindows。ある日運ばれてきた噂のアイスクリームのコーンは、グレーの画面に緑の文字的世界から一転、まるでゲーム機やアニメの様に鮮やかなイラスト調のアイコンが並ぶグラフィックカルな画面だった。いや~もしかして、これ私がメインで触るんですかい?

嬉しかったね。そして楽しかったね~。

やがて気付く。どうやら友人一同はマックを使ってるみたい。

そして旅先でそれに触れまた驚いた。フォントだとかアイコンだとかいちいちかわいい。マックちゃんはその存在そのものが芸術家で、それに比べるとやはりwindowsさんは企業人って感じだった。

いいなあ!マック!

自分がしたいことをする為にお金が要って、才能がないから時間を切り売りするしかなくて、それで始めた派遣の仕事なのに仕事となればそれなりに忙しく無我夢中で日々は過ぎていった。いつの間にか音楽からも芸術からもどんどん遠ざかって、CDひとつ買いに行けないし、展覧会にも間に合わない。私はすっかりWindowsなんだなあ・・・とちょっと淋しくなった。でももはやマックに転向は難しく・・・。もし私が学生の時にコンピューターと出会っていたら、きっと自然ににマックユーザーになってただろうに。

物も人と同じく出会いは運命、ご縁なんでしょう。

まぁWindwsのお陰で夫と出会いましたから、いいこともありました。

スティーブジョブズ氏がこの世を去った。

メーカーに関わらず、彼なくして始まらなかったこの世界。その始まりを体感出来た事は長いコンピューターの歴史の中でどれだけ素晴らしく貴重な事か。彼を失って初めてあの出会いのトキメキが二度とないものだったことに気付く。こんなに遠く離れた国の普通の生活の中に彼の子供たちが数多く存在し、私達を楽しませ、泣かせ、怒らせたりもする。マックユーザーになれなかった私も三人の子の母になり、トイストーリーなんて何十回観た事か。

彼の中から生まれたものを見ると分かる気がする。きっと優しい人だったに違いない。

彼の晩年が穏やかで愛に溢れたものであったことを、心から願います。