小事争論 こじ

アジア服・南国よろず屋ままかのボス。まだときどきちゃぶ台をひっくり返したりするけどだいぶ穏かになりました。

歯痛をめぐる冒険

どんな治療費の高い病院だって無料!の、海外旅行保険も、歯に関しては無力。

歯医者さんだけは自腹で行かなくてはなりません。

そしてこれが高いらしい。こっちに住んでる日本人はみんな歯痛にビビってる!

いやしかし、そもそも保険が使えないインプラントとか矯正については世界のどこより安いと言われてるし、バンコクに来たら虫歯を治して帰るって知人もいた。早くて安いからって。たぶん、星の数ほどあるクリニックの中で安くて上手なところを見つけられたら、日本で1本の歯に何ヶ月もかけて通うよりずっとコスパいいってこともあるかもしれません。

早くて上手くて安い・・・牛丼? ふらりと入った歯医者がもし牛丼屋だったら、かなりの幸運だと思う。

彪が「歯が痛い」と言い出した。

はじめは熱があった時に言ったので少し様子を見ていたが、落ち着いても痛いという。毎日歯を磨く時によく見ているつもりだったけれど、意識してよくよく見ると以前から摩耗が気になっていた歯に亀裂が入ってるような気がする。彼は私に似て深夜にお新香食べまくるんですよ。ええ、歯ぎしり。カリカリギュリギュリゴリゴリ。週明けにでも病院に行くかと思っていたら、外出先で涙涙の痛みが襲ってきてしまった。お友達に良い歯医者さんを電話で教えてもらったけどすごい渋滞でそこまでたどり着けず、近くのBNHへ飛び込んだ。しかし小児歯科医は帰ってしまっていて、しかもぼっちゃんはツボが外れたらしく笑顔で遊びだした・・・(´∀`)出直します。で、翌日予約の時間に再来したけど「これは時間がかかるよ。今日はそんなに時間とってないからまた3日後。パラセタモール飲ませて過ごして」って。うーん(´・_・`)

BNH近いし、感じいいし、綺麗なんだけど、混んでるんだな。で、超高いらしいしヽ(´▽`)/ハハ。でもなにより大人の都合で無駄に鎮痛剤なんか飲ませたくないよなぁ。

で、夫が会社の女の子に「家から近くて高くなくて悪くない」病院を聞いて電話くれました。さっそく学校から帰るとメバーンさんに他2名を預けて行ってみた。「Open time 17:00」えー!「なしだな」と思って帰ってみたら痛いタイムに突入。もうメバーンさんは帰っちゃったので今度はお子さん全部を引き連れてぶっ飛ばして来院!

奥から出てきたのは、キレイでかわいいまん丸のおばあちゃん。

この方がドクター。

「私は小児歯科医ではないので困ったわ」と言いながらもレントゲンを撮る。

写真が上がってくるまでの間、ドクターと受付のおばちゃんと歯科助手のお嬢さん、みんな待合に出てきてソファに座っておしゃべり。「タイ語上手ね。ずっとここに住んでいるの?」ままかの仕事を説明すると前のめりになって「モン族の手仕事は素晴らしいわ!」「あなたのお洋服も素敵ね、これはインド?」と目を輝かせていた。本当にオシャレが好きみたいでスカートも普段使い用だけど柔らかい柄のオールドシルク。「実は日本の放射能が気になって移住してきたんです。鼻血が出たり歯が痛かったりすると心配なんですよね~」と言うと「場所はどこ?仙台ですか?どれ見せてごらん!」と口の中を見たり掌を見たりしていた。「いやいや私に真実は解らないので、ただ心配なだけですから」と言うと、眉毛をハの字にしてうんうんと頷いていた。

「割れた所から歯の根っこまでいかれてるから、処置にとっても時間がかかるわ。そしてこの子に最適の医者は私じゃないのよ。すぐ違う病院を紹介しましょう」と言われたが、私は歯科医ジプシーになるのを恐れ、是非このおばあちゃんにやってもらいたいと思い「大丈夫です。ここでやってください」と言った。私はこの時、英語もタイ語も全部聞き取りきれてなくて、またこっちの歯科システムも理解していなかったのです。今ならわかる。すげー困ってたよな先生。歯科医チームがごにょごにょミーティングの結果、これから始めると夜遅くなってしまうので、明日の19:00に着手しようと決まった。

家に帰って「いい病院だったよ」と夫に報告。

しかし私が饒舌になればなるほど顔が曇る夫。

「そこ、俺が教えてもらったとこじゃないよ」

Googleマップを見ながら確認。makroと言う大型スーパーを目印に「makroの通りの」を「makroの隣の」と聞き間違えていたらしい。しかも来院前にGoogleで調べたらちゃんと「makroの隣」に歯科医があったものだから疑いもなく出掛けたのだ。しかしガードマンの立つアパートメントの敷地内にあったことまでGoogleでは分からず、近くに行ったら看板が見えたので迷わずズンズン入っていったと言う・・・。呼ばれたって思うのも勝手だけどよく見つけたし、よく受け入れてもらえたなー!安いとこ探していたけどお金払うの忘れて帰ってきちゃってて今のとこタダじゃん!←ヒドスギル

おばあちゃん先生、どうりで何度も「私は最適じゃない」と言い続けていた。

そして私は「夫の会社の人がここは良いって紹介してくれたんですよ」と言い続けていた。

ウワ━(。・ω・)ァァ━・゚・スミマセン

それでも翌日「こっちの準備はOK。今すぐ来てもいいよ!」と電話あり、予定より早く施術を開始。キリッとした手捌きと、優しい声かけに彪も大奮闘。1時間に渡ってプラスチックを噛んで口を開け続け、時々小さな声で痛みを訴えていたけど、本当に静かに涙も見せずにがんばった。「偉かったねー!」と清々しく仕事を終えると、先生は少しも休むことなく紹介状を書いてくれた。「これを必ず小児歯科医に」と手渡される。「ここはじいさんばあさん病院だから、子どもの為の材料がないのよ。クラウンも用意できないの」なるほどそう言う事か・・・。「パスポートのコピーは要りますか?」の問いには笑ってスルー。もうこの子がここへ来ることはない、と言う事なのだ。誰だか知らない子だけれど痛みをとってあげただけ。だからカルテも作らない。

X-rayと砕けた歯の除去、歯の根に薬を入れてセメントで固める処置でお会計は1200バーツだった。

お金払ってさよならしたらちょっと寂しい気持ちになったけど、私はきっと自分の歯のケアはおばあちゃん先生にお願いすると思う。名医だと思います。

まったく縁とは不思議なものだ。間違えて行った場所に求めていたものがあったりするなんて。

彪は改めて小児歯科へ行かねばなりません。

日本にも「小児専門の歯科」はあるけど「子どもを診ない歯科」はないと思う。どんな歯科医に行っても子どもだからと帰される事はないよね。しかし世界の歯科は小児歯科を「PEDODONTICS」歯列矯正を「ORTHODONTICS」歯周病を「PERIODONTICS」と細分化していて、専門分野を選んで通うのが常識のようです。ドクターは技術的に虫歯治療などが出来ないことはないでしょうけど、つまりその科にはその科の材料や器具や機械しかなく専門外の治療は物理的に出来ないのです。どれだけ我が儘を言ってしまっていたのか、今理解したところ。

ごめんねおばあちゃん先生(´・ω・`)

でもありがとう!