小事争論 こじ

アジア服・南国よろず屋ままかのボス。まだときどきちゃぶ台をひっくり返したりするけどだいぶ穏かになりました。

カリスマ幻想

塩爺がノッポさん帽をかぶったら、 私にはムツゴロウさんと見分けが付かない・・・ さて、帰国から4日目、タイで無血クーデターが起きている。 昨晩、友人からメールで知らされた時はもうテレビも別の映像を 映していて見ることが出来ず、ハラハラしたまま寝たのだが、 一夜明けてやっとTVを見られたらばバンコク市民は 記念撮影したり、屋台でソーセージを買ったりと呑気な映像。 ひとまずほっと一息。 滑り込むようにタイから荷物も我が家に到着。これまた一息だ。 タイのクーデターは言葉のイメージと違って、国民の意識を反映し 国王から信任を得て行われるのが大方の流れらしい。 戦車が出てきたり、兵士がライフルを構えるなど物々しい雰囲気は かもし出されるもののやがて緩やかに沈静化するのだろう。 まあ、どうやって沈静化するのか、今後何が変わるのかは 非常に、ひじょーに気になる問題だが。 問題がぐずぐずすれば国王が一声を発するに違いない。それで一発解消。 とにかくタイ国民は国王が大好きだ。 好きなものは好きなので、なぜ好きかなんて無粋な事かもしれないが やっぱり興味深い。 私も私なりに自分の国を愛しているが、それは個人的な思いであって どこかの誰かと愛国心とやらで繋がっている実感はない。 しかしながら海外で日本人としての意見を求められた時には嫌がおうにも 「日本」を背負う事になり、国内では感じることのない緊張感を覚えることもある。 その様な時には柄にもなく「美しい日本人」であろうと思ってしまうが、 それは「愛国心」とはちと違う。 天皇制に対しても麗しい幻想は抱いていない。 ある意味日本らしい曖昧な流れの中できちんと決着を付ける事を避けた事の 象徴的存在と思っている。それはまず存在自体が米国にとって有益だった、 と言うこともあるし、他色々な歴史的背景もあり、で、またそれに対して いちいち意見はあるものの、そんなおっとろしい事を言い出すと終らないので ここでは「腑に落ちない」とだけにしておきます。 ともかく、今でも多くの日本人が天皇を愛していると言う事実と共に 少なからずどんな理由であれ「腑に落ちない」人々もいることも事実だろう。 それがタイに至ってはなかなか国王と言う存在について疑問を持っている と言う意見を聞くことが出来ない。 「国王好き?」って私はタイ人によく聞くのだが、「そうでもない」なんて聞いたことは 一度もない。←極めて少ないアンケートによる 外国人の挨拶みたいなもんだから真剣に答えなかっただけかも知れないけど、 あながち嘘でもないでしょう・・・。 継続的で安定した幻想の共有。 まず特定のカリスマに陶酔するにはなるべく生身を知らない方がいい。 毎日、どこかで国王の写真を拝むことが出来るけど気付けば圧倒的に 若い時のものが多い。また、ご一家はよくニュースに登場するが 国王自身はどうだろう。しかしメッセージはいつも届けられるのだ。 そうして素敵なお姿を想像し、共に生きているイメージを持つ。 またその幻想をさらに長期的に安定させ、またときめきが色褪せさせ ないよう、政府は努力を惜しまない。 今年は国王の即位60年を記念して、色々なグッズが売り出されている。 国王のお誕生日は月曜日なので黄色←「なので黄色」って訳分からん でしょうが、タイ人は生まれた曜日によって自分のカラーがある。 詳しくは忘れちゃったが、相性占いなどでは日本人の血液型より さらに深くこだわっているのだ。 で、黄色だかオレンジだかのリストバンドが限定発売されたり 国中上げて黄色いシャツやポロシャツを着て毎日を過ごしている。 私が滞在した数日前も、なんかのツアー?って思うくらい黄色い人で 路上はいっぱい。シーロムに住む外国人や観光客までが黄色いのを 着ていた。もはや着てない方が目立つし、アイラブキングはアイラブ タイランドと同義なのだから、外国人もつい着ちゃう。 国王がらみのイベント、祝日、グッズ、国王の一声による数々の伝説、 逸話、そして仏教。国王はいつも素敵な物に彩られている。 そしてなによりも即位継続からの安定した和平と繁栄がの証となって ますますみんな国王が好きなのだ。 語弊があると承知で言うが、こんなに安定して長く続く「集団催眠」って 凄いなと思ってしまう。 とにかく「幻想」だろうが「集団催眠」だろうが、それで国民が たっぷりと幸せな気分になって、そのおかげで平和が続くなら それに越したことはない。事実みんな幸せそうなんだから 悪いと言ってるつもりは毛頭ない。そして私はタイが大好き。 ただ、やはり愛の謎について意識的に考えていないと私なんかは とても落ち着かない。みんな多少なりともわざとやってる部分があって くれたらいいなと、ちょっと思うのだ。 でないと、世界的有事の際にはその「愛」も諸刃の剣となり得るのでは ないのかと。それは我が国の轍でもあり。 そんなみんなが愛してやまない国王とタクシンさんが「実はあまりソリが 合わない」なんて噂が出た所で決着はついていたんだろう。 でもさ、数年前までタクシンさんにも猛烈な幻想抱いていたんだよね・・・ うーん・・・まあ、その辺は日本における小泉さんも同様ですな。 ポスター売ってたんだもんなあ、当時は。 生身で働いてたらそうそう幻想は続かないか。 戦車を引くことでなく、テレビ局を占拠することでもなく じわじわと幻想を引っくり返していく、 無血で呑気で最強のクーデターなのかも知れない。 国王即位60周年記念御座船パレード・バンコクナビのレポート http://www.bangkoknavi.com/area/area_r_article.html?id=9